エンターテイメントの心理学(1)

■「エンターテイメント」の心理学:エンターテイメント性の分類

 

エンターテイメントの心理的要因については、次のようなものが考えられます。

A1:ドキドキ型⇒ジェットコースターに乗るスリルのような情動が伴なうもの

A2:ゲラゲラ型⇒お笑いタレント番組のような情動が伴うもの

A3:サラサラ型⇒スポーツ漫画のよう気分がさわやかな情動が伴うもの

A4:ウルウル型⇒悲劇を観て楽しむような涙を流す情動が伴うもの

これらの分類はアリストテレス以来のドラマの分類に似ている面があり、人がどんな感情を持つときにエンジョイしているといえるかを分類するものです。

さらに、次のような能力要因からの分類も可能です。
B1:身体技能型⇒スポーツのようなテクニカルな技術にこだわったもの
B2:知的技能型⇒クイズを解くような知的な能力が試されるようなもの
B3:感情技能型⇒とくに人生の目的といったものはなく情緒や感情的欲求を満たすものB4:交流技能型⇒人とのコミュニケーションでおしゃべり自体を楽しむようなもの

こうしたエンターテイメント要因について、さらに詳細なプロセスを追う内容の分類もあるかもしれません。ここではそうした深入りはせずに、心理的な内容の面でどんな効果があるのかを検討してみましょう。

たとえば、具体的な道具と関連で見た場合には単純な分類では通用しないケースがいくつかあります。パチンコなどが典型的ですが、パチンコというゲーム性はA1B2タイプの組み合わせですが、そこにアニメとして「北斗の拳」が利用された場合はA3タイプが加わることになります。その場合のエンターテイメントの情動は、3つの構成要因が絡んだものとなってきます。

エンターテイメントの心理要因は、このように複数の要因がその道具使用の在り方と関係しあっていると考えられるのです。しかも、時間的な流れの中でみたときには、その要因の中でもどれが主流となるかはプロセスごとに変わってきます。

さらにマーケティング的な視点からは、モノ所有の欲求型からサービスの経験価値型といった区分も重要になるでしょう。モノ所有の欲求が満たされていればエンジョイできた時代は自動車を持って郊外へ休日にドライブするようなことがエンターテイメントとして重視されます。誰もが同じようにモノを持つことをステイタスとみなせた昭和の時代であればそうした所有そのものがエンターテイメントであったのです。

■「エンターテイメント」の心理学:エンターテイメント性の分析法

このように人と時代によって、エンターテイメント性の内容そのものも変わってきますが、他方でそこに共通する感情もあります。その場面ごとの予測をして、顧客サービスの質と量を調整していくエンターテイメントの“心の科学”が求められるのです。ここでユニークな動物園のサービス革新の事例を検討してみましょう。

旭山動物園では動物の生態的な動きやライフスタイルの魅力を来場者に伝えるために、餌をただ与えるような仕方はやめて、もっとリアルな野生の動物の生き生きした姿が行動でわかるようにしました。これを生態的な「行動展示」というのですが、動物本来の姿を色んな場面で工夫をして観客にみせたのです。

これは観客側からすると、とても新鮮であると同時に動物たちの自然な生き様や動きがみられることになり、来場者数が何倍にもなったというのです。では、この場合のエンターテイメント性の心理とは何でしょうか?

一つには、A1型のようなドキドキ型の場面があり、それはリアルな野生の動物のダイナミックな動きが描き出すものかもしれません。それはライオンなど猛獣の場合ですが、それとは違うカワイイ系の動物達はB4型の触れ合いの楽しさのようなことでしょう。このような多様性と動きのユニークさが要因となって、動物園の楽しさを引き出したといえます。

これらの定量的な分析はその動きを現場で動画に撮るなどして、参与観察型の調査(人類学的な手法でもある)で分析していく方法も有効です。ただし、行動の変化を指標にしていく必要があり、その動物特有のアクションをパターンとして分類することが必要でしょう。