ストーリー心理を動画に活用する方法(9)

■LPOの3つの最適レベル

LPO(ランディングページオプティマイゼーション)はオウンドメディアの自社サイトを有効なものにするうえで自宅の門として、その改善の優先性を常に保つようにすべきものです。ソーシャルメディアとの連携を考えるうえでは、とくに他のメディア媒体ごとの投資効果(ROI)を知るのに有効です。

LPOを実践する場合、ページを観る側のユーザがどんな期待を持ってアクセスしてくるかを理解しておくことが重要です。仮に商品ブランドを決めて買うようなケースなら、そこに当の商品が写真と解説つきであることが求められます。

そうではなく、その商品はすでに購入済みで今後新たなサービスなど計画があるかを知りたいとするなら、どうでしょうか。ロイヤル顧客であるわけですが、企業の新しい事業への方向性など語るようなページを創っておくことが求められることになります。

こうしたことからすると、LPOはページ選択のマッチングをさせるテクニックでは不十分であることがわかります。その基底にあるものは、「顧客の期待最適化」(LCO)だということでしょう。期待最適化が何かを理解していてこそ、ネット上のコンテンツをどうするかを含めたページの最適化を考えることができるからです。

では、顧客の期待最適化がわかればLPOは問題ないでしょうか。少し考えればわかるように、ネット上の最適性は今やネット上では全てを意味しないものであり、クロスメディアの中の一部になってきています。すまり、どのようなメディアを選択するかという「メディア最適化」が必要だということです。

たとえば、いくつかのメディア選択の主なパターンだけ分類すると次のようになります。
1)        ネット→スマホ→雑誌・本→ショップ
2)        スマホ→ネット→雑誌・本→ショップ
3)        スマホ→雑誌・本→ネット→→ショップ
4)        雑誌・本→スマホ→ネット→ショップ

このようなことから、3つのレベルでのLPの構成を考えることが必要であることがわかります。底から順に次のようになるわけです。
「顧客の最適化」(LCO))→「メディアの最適化」(LMO)→「ネットページの最適化」(LPO)

■「ロングテールの法則」は正しいか?

2006年頃から注目された「ロングテールの法則」とは、ヒット商品以外の商品が、全体では半分以上となるような現象をいいます。The Long Tailと表記されるもので、これは優良な顧客(商品)の2割が全体の8割の利益を生むという「パレートの法則」が一方であり、それと対比されている点が特徴的です。
次の図の左側が販売額が多い商品であり、購買額が高い商品群を表しています。
※参照図⇒http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB

一方、図の右に行くほど販売額が少ない商品群となりますが、ちょうど恐竜の尾のようにそれが見えるため命名されたものです。「パレートの法則」を知らないと、実のところロングテールを強調する意味もわからないのです。

パレートは社会学者であり、さまざまな社会現象が平均的なモノの見方では説明できず、重みづけのある少数が多数を支配することを証明しました。たとえば、アリは社会性昆虫といわれ、全員が同じようにいつも働いているかのように思われていますが、実際に違うといわれます。全体2割だけが一所懸命に働き、巣全体の8割の生産をあげているといったことです。

2000年前後のCRMが話題になり始めたころ、マーケティング戦略として優良顧客をどうセグメントするかが問われていました。このころはまだリアル側のビジネスが対象でしたので、優良顧客2割をどうセグメントしてそれをターゲティングしていくことが最大効果をあげるCRM戦略だとされ、このパレートが使われたのです。

こうしたことからすると、ネット上だからパレートは誤りといったことではありません。ネットでもやはり、優良客の効果は全体に占める割合として高いことに変わりがないからです。

ところが、「ロングテールの法則」こそ、ネット上のビジネスに当てはまる法則だとした固定的な考え方が一部で広まりました。そのような誤解は、アマゾンがネット販売で収益を上げている多くがベストセラーではなく、店頭にも並ばない本が多くあったことから拡大したと考えられます。

その“法則”を根拠づけたものとして、ネット側のコスト面と情報提供の自動化がありました。リアルのビジネスではとてもアマゾンのように多くの本を在庫に持つことはできません。しかも、情報が限定されていた時代では見込み客に告知する機会もなかったわけです。その壁を越えるビジネス環境があってこそ成り立つのがロングテールであったのです。

ところが、アマゾンの成功モデルが強烈であったため、あたかもネットビジネスで普遍的なもののように受け止められました。後にアマゾン自身も誇張し過ぎた点を報告しており、“法則”というほどに強調するものとはなりませんでした。

そのため、現在ではこのキーワードもほとんど死語になってきていますが、問題の本質はロングテールが成立する技術環境の変化を知ることにあったことです。とくに一般的な優良性を過大評価する見方を否定し、潜在的な需要を発見することができる視点を与えたことでした。

こうしたことから、ロングテールはネット上の“法則”というよりも、次の3点を同時に満たすビジネス条件で有効な顧客戦略だと考えるべきでしょう。

1)顧客のニーズが多様であること
2)商品アイテムが多いこと
3)在庫コスト、流通コスト、販売コストが低いこと

ストーリー心理を動画に活用する方法(8)

■「コミュニケーション・デザイン」 の視点

2005年ごろから「コミュニケーション・デザイン」ということがマーケターの間の問われるようになってきます。これはブランディングや販促のような広告コミュニケーションは当然ながら、サービス企画や商品開発のプロセスまで関与する課題をコミュニケーションによって解決していくものでした。

ネット上でのブログやツイッターの役割が大きくなるにしたがって、消費者(ユーザ)とのコミュニケーションはビジネス業務のあらゆる場(空間)と機会(時間)に入り込んできます。それはソーシャルメディアの勃興期でもあり、ネットがSNSやメールという「情報の交換」の領域から「人の交流」の領域へと進化してきたといえます。

人の交流の新しい形態がビジネス全体に大きな影響を与えることになるのです。だからこそ、ネット上の重点は“情報デザイン”ではなく、「人の交流」をデザインするコミュニケーションデザインということになるわけです。

電通においてコミュニケーションデザイナーの役職を持つ岸勇希氏は、広告マーケティングを恋人へラブレターを贈る“比喩(メタファー)”として次のように説明しています。
(※以下の斜め型文章は引用)

『この比喩にはいろいろなことが内包されていますが、今の生活者について例えると、どんなに気持ちを込めたラブレターを送っても、日ごろあまりにたくさんのラブレターをもらっている彼らは、我々が思うほど、それを読んでくれないというわけです。

「それではまずいので、もっと優れた、きちんと読んでもらえるラブレターをつくろう!」と、こう考えがちなわけですが、少し冷静に考えてみると、実は最高のラブレターを書くことがゴールではないという当たり前のことに気が付くわけです。

そう、目的は射止めたい相手を魅了するということなんです。この当たり前のことに気が付くと、アプローチの方法はいっきに広がります。

別にラブレターだけが気持ちを伝える手段ではなく、歌をうたうもよし、プレゼントを贈るのもよいかもしれません。時には直接メッセージを送るのではなく、相手の友人をご飯に誘って事前に味方にしておくことが重要かもしれません。

コミュニケーション・デザインでは、メディアやメッセージといった通常の広告アプローチだけでなく、広告が効きやすくなる環境のデザインや、そもそもの課題の意義から発想をしていきます。その結果、あらゆるコミュニケーションチャンスをデザインすべき対象として考えていくわけです。』

以上のように、広告的なコンテンツやメッセージだけでなく、あらゆるプロセスで回りの環境や仕組み、人の役割なども構成し直していくわけです。ただ、これは実際にはデザイナーというよりもプロデューサに近いかもしれません。

■「キュレーション」の視点

さらに“構成し直す”というコトバは、「キュレーション」として2010年ごろからネット戦略として使われ始めました。これは博物館のような知的・文化環境の場で、その専門家が独自の視点で展示物などを構成し直す活動を意味しているものだといいます。

つまり、専門的な視点が重視され、それを一般の人達がよりわかりやすく理解し、満足を得られるようなサポート的役割を持つ内容です。

左記の考えを活かせば、ネットマーケターはどういう活動をする専門家といえるでしょうか。

それはネットマーケティングの専門家として、ユーザへオリジナルな視点からコンテンツや仕組みを最適な形に組み合わせてサービスを提供する専門家ということになります。

ネット上にあるコンテンツやリアルの世界にある多様な情報・コンテンツを特定の視点から組み替えていくということ。 そこに1+1=2ではなく、10になるような新たな創造的価値を作り出していくような専門家だというわけです。