顧客満足度のCSの指標は一般によく使われますが、成長や利益とのつながりが曖昧な形で目的化してしまっているという問題点があります。たとえば満足している状態を、そのタイミングで聞くのと後で想い出して記憶した事を聞くのとでは結果が大きく変わってくるのです。
そのため、満足した状態がいつなのかを本来は明示しておく必要があるわけですが、それも難しい場合が現実にはあります。その意味では、幸福度も同じことであり、実際に23年度6月時点でコロナ禍から脱しつつあるような状況と比べると、病気率が同じであっても国民全体の幸福度は高くなっているという調査結果も理解できるというわけです。
とくに「ピークエンド効果」として知られる例などは、一般には均等に幸せ感が続いていないため、その盛り上がった時点前後のどこで終わったかが判断に影響を与えるからです。それゆえに、現在は幸福感を短期的なもの(happiness)と長期的なもの(well being)に分けて説明するようになっています。長期的な”ウェルビーング”はポジティブ心理学という学問においてもキーワードとなり、「持続的幸福感」と訳されています。
ハピネスはあくまで何か具体的な行動の結果として現れる瞬間的な感情が伴うものです。スポーツやゲームで勝った瞬間など典型的なものです。心理学では実際にこれを直接測るようなことはせず、それの現れとなる複数の質問項目を作り、組み合わせた形で指標の値としているからです。そもそも”単体”で働くような心理は人間の場合はありません。
何かの感情や思考が複雑に絡み合って外部に現れ行動が引き起こされるからです。そのような概念や用語を一般には「構成概念」とよんでいます。それは複数の具体的なサブ概念が集まったものであり、抽象的なレベルが高くなるほど、構成要素も増えていくことになります。