ストーリー心理を動画に活用する方法(8)

■「コミュニケーション・デザイン」 の視点

2005年ごろから「コミュニケーション・デザイン」ということがマーケターの間の問われるようになってきます。これはブランディングや販促のような広告コミュニケーションは当然ながら、サービス企画や商品開発のプロセスまで関与する課題をコミュニケーションによって解決していくものでした。

ネット上でのブログやツイッターの役割が大きくなるにしたがって、消費者(ユーザ)とのコミュニケーションはビジネス業務のあらゆる場(空間)と機会(時間)に入り込んできます。それはソーシャルメディアの勃興期でもあり、ネットがSNSやメールという「情報の交換」の領域から「人の交流」の領域へと進化してきたといえます。

人の交流の新しい形態がビジネス全体に大きな影響を与えることになるのです。だからこそ、ネット上の重点は“情報デザイン”ではなく、「人の交流」をデザインするコミュニケーションデザインということになるわけです。

電通においてコミュニケーションデザイナーの役職を持つ岸勇希氏は、広告マーケティングを恋人へラブレターを贈る“比喩(メタファー)”として次のように説明しています。
(※以下の斜め型文章は引用)

『この比喩にはいろいろなことが内包されていますが、今の生活者について例えると、どんなに気持ちを込めたラブレターを送っても、日ごろあまりにたくさんのラブレターをもらっている彼らは、我々が思うほど、それを読んでくれないというわけです。

「それではまずいので、もっと優れた、きちんと読んでもらえるラブレターをつくろう!」と、こう考えがちなわけですが、少し冷静に考えてみると、実は最高のラブレターを書くことがゴールではないという当たり前のことに気が付くわけです。

そう、目的は射止めたい相手を魅了するということなんです。この当たり前のことに気が付くと、アプローチの方法はいっきに広がります。

別にラブレターだけが気持ちを伝える手段ではなく、歌をうたうもよし、プレゼントを贈るのもよいかもしれません。時には直接メッセージを送るのではなく、相手の友人をご飯に誘って事前に味方にしておくことが重要かもしれません。

コミュニケーション・デザインでは、メディアやメッセージといった通常の広告アプローチだけでなく、広告が効きやすくなる環境のデザインや、そもそもの課題の意義から発想をしていきます。その結果、あらゆるコミュニケーションチャンスをデザインすべき対象として考えていくわけです。』

以上のように、広告的なコンテンツやメッセージだけでなく、あらゆるプロセスで回りの環境や仕組み、人の役割なども構成し直していくわけです。ただ、これは実際にはデザイナーというよりもプロデューサに近いかもしれません。

■「キュレーション」の視点

さらに“構成し直す”というコトバは、「キュレーション」として2010年ごろからネット戦略として使われ始めました。これは博物館のような知的・文化環境の場で、その専門家が独自の視点で展示物などを構成し直す活動を意味しているものだといいます。

つまり、専門的な視点が重視され、それを一般の人達がよりわかりやすく理解し、満足を得られるようなサポート的役割を持つ内容です。

左記の考えを活かせば、ネットマーケターはどういう活動をする専門家といえるでしょうか。

それはネットマーケティングの専門家として、ユーザへオリジナルな視点からコンテンツや仕組みを最適な形に組み合わせてサービスを提供する専門家ということになります。

ネット上にあるコンテンツやリアルの世界にある多様な情報・コンテンツを特定の視点から組み替えていくということ。 そこに1+1=2ではなく、10になるような新たな創造的価値を作り出していくような専門家だというわけです。