女性はなぜ”しぐさ”の理解が得意なのか?

■しぐさや表情を理解するのは女性が得意なのはなぜ?

浮気を見破ることにかけては男性より女性がずっと優れています。例えば、男性では目をそらすのに、女性は嘘をついていても相手の目をじっとみつめながら話しができます。また、写真を200枚ほど見せて本当に悲しい表情かどうかを判断させる実験では、男性は70%程度なのに女性は90%当てることがわかっています。

つまり、相手の表情から感情を読み取る「表情認知」でも優れているのです。この表情認知については、悲しい表情などの表情を写真に撮り、それを200枚程を男女に見せて正確に判定できるか実験した結果、女性は男性より20%も優れていたというのです。感情このような理解のスキルを「ソーシャル・スキル」と云いますが、女性は明らかに男性より優れているわけですね。

この面で、女性が優れている原因は、性的な脳の役割・機能のレベルの差があります。女性は右脳と左脳を橋渡しする「脳梁」の太さの比が男性より大きいことがひとつの理由です。つまり、左右の脳のかけ橋となるものなので、それの交流が活発ということになり情報交換がしやすいことを意味するからです。

これによりバランスよく物事を並列処理することができます。男性はTVを視るなら他のことを同時にはできませんが、女性は視る一方で子どもをあやしたり友人とおしゃべりしたりできます。この認識の「並列分散処理」の仕方こそ、直感的な働きでしぐさや相手の表情の変化を捉える能力があるのです。

「並列分散処理」というコトバは、脳科学でも知られるものです。 これはちょうど、ニューロン【脳神経細胞)が、それぞれ単体では極小の記憶単位でしかないのですが、何億とネット網として相互作用をすることで高度な思考・感情を産み出すという仕組みのことです。

人の能力とは、ニューロンによって制約されているので、当然その相互作用の力をフルに使って直感を働かせます。そして、しぐさのようなわずかな行動の変化情報の意味を状況の中で読みとるわけです。

その処理の仕方は1+1=2のような計算ではなく、1+1=3~100のような結果を生み出すものです。そこに能力を固定的にみてはならない人間の可能性のすばらしさがあります。
といっても、明日のテストで何点取れるか心配している学生など、人の知識の限界を常に感じる現実があるようにも感じます。そのギャップはどこから来るのでしょうか?

実はテストによって評価されている側が、その評価を固定的に受け入れてしまう自己の「認識」にあります。「能力」をどうみるかという認識の枠組み=スキーマが問題なのです。
とくに、暗記的要素をメインの領域としたテストによる弊害は大きく、それこそが人の能力を低い状態で認識させる「認知的制約」になっているといえるのではないでしょうか。

行動を制約して方向づける「アフォーダンス」とは?

■状況との相互作用から行動を理解する「アフォーダンス」の見方

知覚情報は、人の身体動作(五感)による環境との相互作用によって触ったり感じたりする性質のことです。これは一般の思考とは区別される認知プロセスです。生態心理学者J・J・ギブソンはその中のある特有の性質を「アフォーダンス(価値づけられた情報)と定義しました。

例えば、椅子の“形”によって深く座るか、浅く座るかの動作が自動化され誘導されるとみなすのです。モノが使いやすといったことは実はこのスムーズな自動思考をさせるかどうかにかかってきます。こうした性質を商品開発に結びつけて「ヒューマン・インタフェース」の研究が進んできました。

ギブソンは様々な生物の視覚を調べましたが、ある環境の特定の情報がそれらの生物の特定の行為を促すことを発見しています。たとえば、カエルは明暗に対して敏感で、頭上が一定の割合で暗くなると跳びはねます。これは天敵のカラスなどがきた際に“逃げる”というアクションを誘発しているわけです。

カエルはこのとき考えて飛ぶのではありません。行動として反応する状態にあるだけで、特定の明るさの変化情報が「飛ぶ」という逃げる行為を促すのです。そこには動物の行動が長い年月の中で、生き残るために蓄積してきた行動パターンの教訓が組込まれているといってよいでしょう。

そして、人間も同じように特定の外界の光や音といった感覚刺激の情報を受け取り、それを特定の行動パターンとして受け取めるようにできているといえます。従来の心理学では、このような外部刺激を単純な刺激反応として区分していましたが、アフォーダンスの視点はそれを環境側と動物の両者の相互作用の産物として理解した点に特徴があるのです。

人とモノを静止状態ではなく、アクションの中で捉える相互作用という発想は従来の心理学にない斬新なものだったといえるでしょう。

「直感」による認識

“直感“の心理とは?

直感は神秘的なものではないので分類してみましょう!
直感や第六感というと神秘的な力のように思うかもしれません。ですが、人の五感とは別にあるのではなく、その相互作用でトータルなものとして発生するものです。なにか忙しいときのほうが企画が出たりするのも、追い込まれたために脳が活性化されていると考えられます。そこで、ひっしゃ私は直感を次のように5つの特徴に整理して定義しなおしました。この分類は雑誌プレジデントにも特集に取りあげられ紹介されたものです。

①「直鑑」=名画の鑑賞眼等
②「直観」=長期的な見通しや観察による展望等
③「直勘」=技術者の発明・技能の閃き等
④「直喚」=緊急の危険本能等
⑤「直感」=感情の機微の察知等

①の「直鑑」は、絵や音楽など芸術的な作成を観察・聴いたりするときに、それが善い作品であることが瞬間的にわかるような場合です。 プロになればそうした芸術的な鑑賞眼を持つ力があると思われますが、それを人に説明するのは難しいものです。 なぜ善いのかは感じ取るしかない、といった世界かもしれません。
②の「直観」は優れた経営者のような長期的なビジョンや展望を持ち、戦略的な発想ができるといった場合です。これは未来を予測する観察眼と多様な観点からの知識が組み合わさったものと考えられます。
③の「直勘」は、技術者などの発明や技能の閃きに関するものです。アイデアを温める期間があって、つねに問題を解決するために考え、それがあるときふとリラックスした瞬間に一気に解決する。そんなときに働くものといえるでしょう。
④の「直喚」は危険を喚起とするというリスク意識、つまり、危ないと感じるときの第六感のようなことです。ナマズが地震の前兆のようなときに騒ぐといったことは昔から言われていますが、そうした危険を察知するような直感です。
⑤の「直感」は浮気を見抜く女性の感のようなことです。感情のわずかな動きを感知して、どんな変化の原因があるのかを推測する力といったところでしょう。この直感は明らかに女性のようが男性より優位にあるということは確かです。

 

■直感の心理をニーズ調査に応用する方法

実は直感といった内容はニーズ調査でも重視されるようになってきています。その典型的な理論と実践で知られるのがジェラルド・ザルトマンの「ZMET法」と呼ばれるものです。これは潜在的なニーズを認知科学と脳科学の成果から開発したもので、ハーバード大学の心脳研究所の調査方法ですので、少し紹介しましょう。

この手法は無意識を対象として初めてマーケティング調査にメタファー(比喩的)の認知科学を応用して成功したものです。従来から、革新的な商品コンセプトはニーズ調査からは生まれないとよくいわれます。これは「ウォークマン」や「写るんです」などはそのとおりです。

問題は潜在的なニーズを表に出させる方法にあります。そのまま消費者に欲しいものを聞いても意味がなく、むしろ「ニーズを顕在化する」という方法が必要だからです。そのために、ザルトマンらは、イメージやメタファーを使った消費者の潜在意識調査を行っています。

それをZMET(Zaltman Meta-phor Elicitation Technique)とよび、写真や動画などのイメージマップ的なものを作成し、その繋がりから購買動機など探るわけです。図の例は「ハイブリッドカー」に関する調査例で作成されたイメージのマップであり、これは「コンセサス・マップ」と称して、消費者の潜在心理を探り出していくというわけです。