認知科学による動画マーケティング(8)

■ゲーミフィケーションについての認知科学的アプローチ

ネット戦略としてゲーミフィケーションを実践していくうえで、成功条件として次の6つの“自由度”をあげることができます。
これは私(匠英一)の独自の認知科学的なアプローチによるものですが、以下がその自由度の内容です。

1:【時間の自由度】自らの都合でいつでも開始し終わることができる
2:【空間の自由度】自らの場所がどこであろうと同じようにできる
3:【報酬の自由度】自らの選択に応じて報酬(成果)が得られる
4:【測定の自由度】自らの行動の結果や反応を測定し数値化できる
5:【相手の自由度】対戦する相手が自ら望む形で多様に連携できる
6:【展開の自由度】原型を土台にして亜流の表現展開が自由にできる

「時間の自由度」は、 「即時フィードバック」と呼ばれる反応時間に関わる問題と関係しています。これはクイズなどで回答してその正解が返ってくる時間など反応した結果の時間を 言います。入力後に1秒で回答が示されるならストレスもないわけですが、10分かかるとなるとその間の待ち時間が退屈なものと感じられるからです。

また、自分の好きな時間にゲームの結果などが、すぐにわかることがモチベーションに関係してきます。これは「測定の自由度」に関連することでもあり、何かを測る方法が簡略なものとして日常化されることが条件です。

「空間の自由度」と は、場所が選べることやその制限ルールが柔軟であることを意味します。たとえば、フォースクエアはスマホのアプリでゲーム的な形で地域の店を宝探しをする ショッピングモデルです。これは一定のリアル地域をGPS機能で場所特定しながら、加盟店舗を廻る宝探し的なゲームなのです。このリアルの空間とネット空 間が位置情報によって連携している点が重要で、GPSの利用が拡大すればさらに面白い進化をしていくことが期待されます。

「報酬の自由度」とは、金銭的な報酬だけでなく、バッジやポイントなど多様なメリット性を与える仕掛けができるということです。バッジは名誉欲やベストワンの魅力を強調するものであり、ポイントは後で金銭の代わりとしてサービスが割引されたりするメリット性があります。

ただし、パチンコの玉が後で金銭に還元されるように、それは当人にとって価値ある何かと還元されるルールが前提なければ成立しないものです。セカンドライフが一時期、爆発的な人気を得たのも「リンデンドル」という仮想貨幣が利用できるようにしたからでした。

「測定の自由度」とは、測定する道具やノウハウが多様になり安価に誰でもできるようになったことです。「ランキング・レベル」や「ポイントレベル」が、常に必要な場面で“見える化”されている状態というのが「測定の自由度」の意味です。

ネッ ト上ではログデータがアクセスした際に取れるため、いつ、どこから、どのPCが、どのように、といった詳細なプロファイル情報を得ることができます。その 結果、無料の分析ツール「グーグルアナルティクス」など利用すれば、利用者(顧客)のネット上の購買行動なども容易に知ることができ、飛躍的なマーケティ ング情報の利用が進むわけです。

「相手の自由度」は、対戦者の候補を選ぶことができる自由度のことで す。その候補がネット上の友人であっても、その友人の友人といった連鎖関係から複数の候補を選んだりできるといったことです。いわゆるソーシャルゲームが ブームになっている現象をみれば、その効果がどれほどのものかわかるというものです。

ソーシャルゲームの受けている理由は、ゲームを個人内の趣味範囲にとどめるのではなく、ゲームを通じて交流していく関係の拡がりやそこで協力したりする活動の楽しさにあります。

こ のソーシャルなゲーム性の可能性ということでは、ジェーン・マクゴニガルの著書『幸せな未来は“ゲーム”が創る』 http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3 %83%9E%E3%82%AF%E3%82%B4%E3%83%8B%E3%82%AC%E3%83%AB/e/B00IJCWJIW が有名で、ゲー ム業界のみならず、マーケティング業界にも大きなインパクトを与えたものです。

「展開の自由度」とは、初音ミクが著作権をオープンにすることで、当初の素材としての歌姫的な3Dモデルから、多様なバージョンの模擬的ミクが生まれてきました。この成功の要因が「展開の自由度」のカギとなるものだといえます。

デジタルコンテンツの優位性は、まさにこの展開の自由度にあります。言い換えると著作権が切り貼りデータとして2次利用、3次利用まで拡大できることです。その結果として多様な顧客層にまで共有化が進み、またその顧客(利用者)が他の見込み客まで口コミをしてくれるような
サイクルが生まれるというわけです。

音楽、映像、メディアの多様な組み合わせを異なる分野の人達の協働作業によって創り出す。そのことで立体的なコンテンツサービスが展開されたきたといえるでしょう。