リーダーシップの心理(4):任せる勇気編

ポジティブ心理学からみた「成長マインド」の考え方

成長マインドは通常のポジティブ心理学の見方ではこうした限界があるといえますが、それでも全体的な見方は幸福優位の立場が望ましいということです。その根拠は、長期的には人が他者と協力していくうえで成功や失敗を通じて怒りだけではなく、仲間への共感や勝利への確信などポジティブな感情要因が生まれてくることで、変革が維持向上されてくるからです。

そこには感情としてのポジティブ優位性は明らかなものであり、誰もがその感情の中でやる気を高め向上心を持つようになってくるからです。
そもそも向上したいという成長マインドの欲求は、誰かに認めてもらいたいという「承認欲求」と一体となっていると考えられるのです。社会的な向上心は、自己承認的な欲求でもあり、かつ他者承認的な欲求と裏腹でもあるのです。スポーツのような身体技能を競う世界ではそれがオリンピックのようなものほど、自己の成長マインドと社会から認められる承認欲求の両面性が際立ってきます。

こうした見方からすると、成長マインドには怒りという飢えの感情はなく、自分本来のポジティブなものへの欲求をベースにするものだとみえるかもしれません。
ビジネスでは営業など顧客へのサービスを軸にするものなら、承認欲求も高いし成果への達成が自己のインセンティブとして見えるものです。

それゆえ、容易に成長への動機づけができるものです。営業の仕事については人間関係を重視する満足志向は意義のあることでしょう。ですが、内勤的な仕事については顧客という存在は漠然としていますので、このような明確性がなく動機も曖昧となってきます。
そこにビジネスとしての成長マインドをどう創るかという難しさがあります。

もし自分の周りの人達をみても成長を感じ取れるようなら、あなた自身も成長への期待や希望をもてるタイプの人に違いありません。このような感覚をここでは「変革可能感」と呼んでおきます。

自分を取り巻く組織や人、そして自分自身が“変革可能”だという感覚であり、未来志向の実践を促す力といえるものです。
変革可能という実感があるためには、これまで自分が経験してきた変革への行動が何らかの形で成功していること。そして、それが現在から将来にかけて継続できている実感を持てることが必要です。そのベースがあってこそ、自己実現への行動が具体的な形になると考えられるからです。

変革という視点からリーダーシップが問われることになります。マネジメントは複雑性への対応であり、リーダーシップは変革がキーとなるものだからです。
つまり、変革はそこに未来への期待や可能性をみるのであって、そのビジョンが不可欠となりますが、マネジメントは他者を目的へと近づける調整力が要であると考えられるのです。

もちろん、こういう言い方もできます。企業のリーダーシップを考えるとき、その会社の社長の“人間力”がなかったから業績が上がらないのだと。人間性や人の“器”ができておらず、社員達の心をつかむ力やリーダーシップがなかったのだと。

このように、個人的な資質として社長の能力の無さをいうことは容易なわけですが、ビジネス心理学では変革を3つの領域に分類して、その変革プロセスに注目しています。とくに人の仕事においては人の変革を問うために、人の活動をどう変革可能なものにしていくかということが問われるのです。