リーダーシップの心理(3):任せる勇気編

「逆転型成長マインド」と「現在型成長マインド」

相手に何事かを任せるには、自分が自律し成長している感覚が問われます。現在の自分が将来に向けても成長できるか、そして成長しているという感覚があるか、この2つのことは成長マインドを決めるものです。
そこで、前者は「希望型成長マインド」(HDM)、後者は「現在型成長マインド」(PDM)とここでは称しておきます。

HDMはビジョンとも関わる内容ですので、社会観など多面的な要因がかかわってきます。他方のPDMでは自己自身の行動レベルでの成功や失敗の経験の評価が関わってくると考えられます。小さな成功が続いていれば成長を実感することになるし、失敗続きであればそうはならないからですが、そこに自己の挑戦度がどれほどかという評価感が関係してくるので注意が必要です。

もし、挑戦度が高いことで失敗を繰り返していても、自己評価は低くならないと考えられ、場合によっては失敗自体を成長の機会ともみることになるのです。
このような否定的経験を乗り越えての肯定的な自己評価こそ「レジリエンス力」のコアになるものだといえるでしょう。私はこれを「逆転型成長マインド」と呼んでおきたいと思います。失敗を逆転させる挑戦心を持つものですが、それは根性や意思力のテーマとも関連するレジリエンス本来の内容です。

レジリエンス概念は抵抗や克服といった反転的な事象を客観的に表す概念ですが、成長マインドの概念はより主観と感情要素が入った心の状態を意味するものです。
科学的な表現としては、いずれも認知、感情、行動要素のそれぞれのバランスも考慮した心的傾向を示す指標が必要となります。成長マインドという概念をレジリエンスに導入することで、より感情要素の実感をベースに当人がそれをどう受容し習得していくか、キャリア発達の中で問題にできるのではないかということが私の問題意識にあるのです。

さらに成長マインドの概念は、キャリアをどう発達的で学習可能なものにしていくかを主体側に即して考えることがしやすくなります。レジリエンスの概念では、どうしても外部からの圧力的なものや対抗する対象が前提で受身的な形になってしまうのです。元来の意味が“抵抗”ですので、それは他者的な存在を敵とみる見方となっているからです。そこには主体としての成長するうえで不可欠な“協力”や“共感”といったポジティブな対象を主体側にすえる発想が抜けているのです。

成長マインドは自己本来の在り方をマインドフルネスの視点も取り入れながら発展させることができます。マインフルな主体側の在り方とは何かと問えば、私は次のように定義しておきたいと思います。

「成功や失敗を主体的受容(ありのままの受け入れ)しながら、未来においては善となることを信じる心の在り様のこと」

人は未来を考えずに入られませんが、どうなるかは予測ができてもそのビジョンへの確信はもてません。ですが、未来をどう評価するかは自分が選択できるものです。
つまり、未来を評価する側の自己の在り様にこそ成長マインドのコアな役割があるのです。

未来がいつまでも不安の対象でしかないのかは、当人の成長マインドに左右されるものです。成長マインドが逆転型であるなら未来は挑戦と希望の対象であり、現在型であるならば過去の経験に依存する不安なものになってくるのです。どちらを選択するかは自己自身の問題であり、自己がどういう学び方をし、そこに新たな何をみるかにかかってくるのではないでしょうか。

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