■「演劇型マーケティング」への発展
ここで述べる「演劇型マーケティング」とは、商品をモノとしての価値だけでなく、『ストーリ化+ゲーム化+エディケーション化』という認知科学を応用したマーケティングのことです。
この定義は匠独自のものとしてですが、すでに用語としてはマーケティング業界でも使われてきています(例:『関係性マーケティングと演劇消費』和田充夫著)。
「演劇型マーケティング」では、人を主人公としたエピソードの展開と、実話か寓話かにかかわらず多くの人が語りうる内容の物語的な構成があることです。
これは「ストーリー化」ということであり、その意味はすでにこの連載で述べてきたことですが、語りを継承してきた童謡や寓話などを思い描くとよいかもしれません。言語が元々は口頭による伝承として文字が発明されていなかった時代から、語りとしてのコトバはその集団の文化や知恵を伝える道具であったわけです。
詳細の事実や客観性といったことよりも、納得感や興味付けなどの工夫がこらされ伝承性を高めるものがストーリー性だといえます。そのために、動画であれメール文であれ、記号レベルは多様であってもよく、コンテンツとしての効果は受け取る側のストーリー性への共感や興味によって変わるということです。
ネット時代の発展は、従来の客観主義的な事実の伝達による言語コミュニケーションよりも、感情の伴った楽しさや共感に重きが置かれるようになったともいえます。
演劇的な効果は、観客を楽しませるための舞台設定から物語のシナリオ作り、そしてアクターとの演劇型の協働作業として成立するものです。そこにはエンターテイメントのプロセスが、消費行動の全てのプロセスで求められてきているビジネス環境の変化があります。
このようなことから、演劇型のネットマーケティングとは①「ストーリー化」+②「ゲーム化」+③エディケーション化によってデザインすることができ、その活用の結果としてサイト上での口コミが促進されていくものだといえるのです。
つまり、多数の消費者も参加した共創のビジネスモデルへと発展していくものとみなすのです。