(その3)能力の「評価」

■能力診断の問題点は何か

たとえば、営業力ということを個人の能力の問題としてだけでみるなら、これまでの能力観でもよいのです。顧客と接する場やチームでは、「潜在的な能力」や詳細なスキルでは、当人には何をどう改善してよいかイメージがわいてきません。
そこが、認知科学的な視点の必要なところなのです。

営業の仕事力の評価は、上司によるOJTで実際に立ち合う形で行われる場合もありますが、評価されている当人からすると普段の行動ではないはずです。

上司によく見せたいという「他者の承認」(太田薫)への動機が働いてしまうからです。ここが心理的な内面や能力を外部から“評価”するときの難しさです。これは営業だけでなく能力全般についていえることです。

そこで、一歩進んで評価の発想自体を変えてみるのです。
「評価」とは、当人が自己の行動を振り返り、より最適な行動を選び、自己の成長とつなげるためにするとみなすのです。このような自己成長の視点からの「評価」こそ、メタ認知を活かした評価観だといえます。

そして、このような視点を持てば、「評価」を自己目的にしてしまいがちな人事考課や学生の成績評価の在り方も改善することになるのではないでしょうか。