■「認知的制約」が意味するもの
人や物事を理解しようとすること視覚情報の処理だけで片付く問題でないところが人の認識の難しいところです。認識はただ単に、その対象そのものとして視るという認知モデルで理解するのではなく、人とモノ(媒体)と目的の3者の相互作用を理解することだ、と捉え直してみる必要があるからです。
私たちは常に何かを理解しようとするときは、自分の既存の「認知モデル」をベースにするわけですが、そこには理解する側の目的と、理解の対象となる場や状況が深く関係しています。
人に何かを「質問」することも、質問の言語表現そのものが制約となると同時に、その意図・目的に応じて調査者側が「選択的注意」を働かしてしまい、歪んだ理解をしてしまう傾向があるのです。
また、聞かれる側もその「質問」の内容を中立的に応えているのではなく、相手が誰であるか、その状況が緊迫したものかといったことで、大きく当人の想起・記憶に影響が出てしまうわけです。
こうした歪みの認知プロセスは、常に私たちの周りの状況(場)に依存したものであり、それを「状況認知」と称しています。 実践の科学として認知科学を応用する際に、考慮すべきことは、この「状況認知」であり、そこでキーとなるのが、前述した「認知的制約」ということなのです。