「直感」による認識

“直感“の心理とは?

直感は神秘的なものではないので分類してみましょう!
直感や第六感というと神秘的な力のように思うかもしれません。ですが、人の五感とは別にあるのではなく、その相互作用でトータルなものとして発生するものです。なにか忙しいときのほうが企画が出たりするのも、追い込まれたために脳が活性化されていると考えられます。そこで、ひっしゃ私は直感を次のように5つの特徴に整理して定義しなおしました。この分類は雑誌プレジデントにも特集に取りあげられ紹介されたものです。

①「直鑑」=名画の鑑賞眼等
②「直観」=長期的な見通しや観察による展望等
③「直勘」=技術者の発明・技能の閃き等
④「直喚」=緊急の危険本能等
⑤「直感」=感情の機微の察知等

①の「直鑑」は、絵や音楽など芸術的な作成を観察・聴いたりするときに、それが善い作品であることが瞬間的にわかるような場合です。 プロになればそうした芸術的な鑑賞眼を持つ力があると思われますが、それを人に説明するのは難しいものです。 なぜ善いのかは感じ取るしかない、といった世界かもしれません。
②の「直観」は優れた経営者のような長期的なビジョンや展望を持ち、戦略的な発想ができるといった場合です。これは未来を予測する観察眼と多様な観点からの知識が組み合わさったものと考えられます。
③の「直勘」は、技術者などの発明や技能の閃きに関するものです。アイデアを温める期間があって、つねに問題を解決するために考え、それがあるときふとリラックスした瞬間に一気に解決する。そんなときに働くものといえるでしょう。
④の「直喚」は危険を喚起とするというリスク意識、つまり、危ないと感じるときの第六感のようなことです。ナマズが地震の前兆のようなときに騒ぐといったことは昔から言われていますが、そうした危険を察知するような直感です。
⑤の「直感」は浮気を見抜く女性の感のようなことです。感情のわずかな動きを感知して、どんな変化の原因があるのかを推測する力といったところでしょう。この直感は明らかに女性のようが男性より優位にあるということは確かです。

 

■直感の心理をニーズ調査に応用する方法

実は直感といった内容はニーズ調査でも重視されるようになってきています。その典型的な理論と実践で知られるのがジェラルド・ザルトマンの「ZMET法」と呼ばれるものです。これは潜在的なニーズを認知科学と脳科学の成果から開発したもので、ハーバード大学の心脳研究所の調査方法ですので、少し紹介しましょう。

この手法は無意識を対象として初めてマーケティング調査にメタファー(比喩的)の認知科学を応用して成功したものです。従来から、革新的な商品コンセプトはニーズ調査からは生まれないとよくいわれます。これは「ウォークマン」や「写るんです」などはそのとおりです。

問題は潜在的なニーズを表に出させる方法にあります。そのまま消費者に欲しいものを聞いても意味がなく、むしろ「ニーズを顕在化する」という方法が必要だからです。そのために、ザルトマンらは、イメージやメタファーを使った消費者の潜在意識調査を行っています。

それをZMET(Zaltman Meta-phor Elicitation Technique)とよび、写真や動画などのイメージマップ的なものを作成し、その繋がりから購買動機など探るわけです。図の例は「ハイブリッドカー」に関する調査例で作成されたイメージのマップであり、これは「コンセサス・マップ」と称して、消費者の潜在心理を探り出していくというわけです。

 

認知科学による動画マーケティング(6)

■未来の在りたい先行経験「ゲーミフィケーション」の心理効果

ゲーミフィケーションはゲーム的な特徴をただビジネスに取り入れただけのものではありません。それだけであれば、その本来の可能性の半分にも満たないものになってしまいます。リアルの世界では作れない世界や行動を先取りして描き出して模擬的な世界を作り出すことによって、新しい消費欲求(動機)とその行動を生みだすようにすることが重要だからです。

この分野では、フライトシュミレーションが先行経験の先端技術で行われた基本モデルといえます。失敗しても危険はなく、リアルに近い経験をそこで得ることができるため何をどうすればよいかを学習できるものです。そのリアリティが実際の飛行でも役立つことは明らかです。そこから、商品を購入した顧客がどうそれを利用(消費)するか疑似体験化する場としてネット上の在り方を考えてみようというわけです。

そして、2005年ごろに登場したセカンドライフは、ある意味ではそのネット上の理想モデルをめざしていました。リンデンドルという貨幣のやり取りが話題にもなりましたが、その試みは実際のユーザのニーズに合わず一時のころに比べ随分トーンダウンになった感があります。

マーケティングの専門家にとっても、これを失敗とみるか、成功への途上における困難とみるかは意見の分かれるところです。企業にとっては高級なコンテンツを3D世界として見せる場ということでしたが、コストやコンテンツ作成の能力レベルで壁が高すぎた点など失敗要因とされています。

しかし、本質的なことはコスト上の問題以上に、ユーザ(消費者)が主人公となれて関与できる場ではなかったということでしょう。まだフェイスブックなども登場していなかったわけですが、コンテンツのクオリティは企業側で決めるものであって、どうインパクトのある「完成品」を提供できるようにするかが企業側の関心ごとであったのです。

結局のところ、ネット上の新しい場であっても、基本の考え方は従来のビジネスモデルである企業側のブランド戦略の延長であったのです。そこから、一歩出るためにはどうしてもソーシャルな関係性の構築が不可欠であったといえます。

人が人のコトバで未来を語り、当人がまだ経験していなかったことを他者の体験談として聞けるようになった。それは経験の一般的な交流という意味以上に、自己を超えた未来の経験記憶(心理学では「エピソード記憶」という)に働きかけるものです。そのエピソード記憶の意義はただ一般的な知識として理解する「意味記憶」と比較して、次のようなところにあります。

1)エピソード記憶は経験の具体的な文脈とつながっているため、その場との結びつきが強くなる
2)エピソード記憶は記憶に残りやすく永続的な形で感情とつながっている
3)エピソード記憶は人に語りやすい形であるため、口コミ効果を創りやすくなる

以上のことからすると、先行経験として試供品などを利用したりネット上でその使用経験など口コミを知る機会が増えることによってエピソード記憶がさらに増幅していきます。その結果としてブランドへの高い関心や購買意欲を創りだすという相乗効果がうまれるのです。

エピソード記憶は物語の形で時間と場所とつながって理解している状態です。想起される場合も、その時間と場所に影響されるため、同じ場所に来たりすると想い出としてよみがえったりします。クリスマスが誕生日などでもらった商品が忘れにくいだけでなく、その後の消費生活にも影響を与えるのはそうした理由によるものです。

 

認知科学による動画マーケティング(5)

■未来の在りたい姿を描くストーリーの意義

時間の認識は過去から現在そして未来へという流れが一般的です。経験を思い出す場合は大方がそうした時間順にしているわけで、だからこそFacebookなどの表示(タイムライン)がネット上の交流の記録として人気があるわけです。

ところが、そこに落とし穴もあることに気付いているでしょうか。過去から順にたどっていくことが一見自然であるようにみえても、それによって人は自分の過去の経験という認知の枠にとらわれやすくなります。過去の延長として未来をみてしまうからです。

そこで、逆に未来から現在そして過去の経験を見直すことが求められるようになってきます。それがソーシャルな時代のビジネス展開に不可欠なのです。これは過去から現在ではなく、未来を在りたい姿から現在をみてイメージできるようにすることです。そして、現在の自己の行動を振り返りそこにチャンスや可能性をみるといった新しい心理カウンセリングとしても注目されているメソッド「ソリューションフォーカス(Solution Focus)」という手法で知られるものです。

この方法は心の病(鬱や統合神経失調症)を治す短期療法で効果をあげ、その後ビジネス分野での能力開発にも応用されるようになりました。そのメソッドは、国内において筆者と東大の研究者らで、エリクソンメソッドとして90年代初めから学会を創設し普及をめざしてきましたが、それはネット時代においてソーシャル性とストーリー性の2つの関係性をつなぐものとして重要だと考えています。

その理由として、「試行の場」がストーリーによって創れるということがあります。 「試行の場」とは、観光地で温泉に入る前に駅の足湯のような簡易な場を提供することや商品の試供品を試すようなことです。つまり、サービスしたい内容・価値を模擬的な形で“試行経験”をしてもらうことがポイントなのです。そうした先行的な試行経験が人の思考・記憶・感情にどういった効果をもたらすでしょうか。
それがネット上で行われる先行経験、つまり、仮想の在りたい姿を「ゲーミフィケーション」の場として描くことが重要となってくるわけです。

認知科学による動画マーケティング(4)

■「ゲーム内化」タイプの「ゲーミフィケーション」の事例

「ゲーム内化」のタイプのゲーミフィケーション事例を検討すると、 これはゲーム自体の中に消費行動やビジネス価値となるルールなど取り入れていくものなので、出発点が「ゲーム在りき」だということです。

典型的なものは、パチンコはゲームですが、パチンコビジネスはその土台に当たる環境です。もし、パチンコをソーシャルゲーム的なものにしネット上で始めるとどうなるでしょうか。

そこには物理的な玉はないにしても、穴に入る仕掛けがあり、玉の入りによってインセンティブを与えることができます。それをポイントとして複数の提携したネットショップで商品と交換できるなら、それは「ゲーム内化」のタイプだといえます。 あるいは、ソーシャルゲームの場にビジネスとしての利用度を上げる仕掛けを作るなどの方法もあります。

たとえば、次の住宅建設の住友林業社の事例をみてみましょう。
※住友林業株式会社:http://sfc.jp/ie/quest/

このストーリーは冒険物語風のクイズに答えていけば宝物(ポイントなど)を得られるような「ゲーム内化」のタイプです。楽しそうな雰囲気で本格的なアニメキャラクターを作成している点でブランドイメージアップにはなっていると思われます。

その内容は住宅建設に関連した知識であり、クイズをしながら学習効果を生むというものです。子供受けするような外見イメージですが、クイズ内容は大人向けというところであり、クイズ好きの若い女性などに向いているかもしれません。

ただし、この当たりの顧客イメージは明確ではないところがあり、この知識を持ってほしい顧客層とこのゲームがマッチしているかどうか問題となります。ちょっとしたお遊びとして親しんでもらうことをねらいかもしれませんが、リーチしたい顧客イメージを「ペルソナ法」などを使って明確にしておく必要があります。

認知科学による動画マーケティング(3)

■「ゲーミフィケーション」の2つの意味

ゲームによって感動や喜びを創るノウハウをあらゆるビジネス領域に応用しようとするメソッドが「ゲーミフィケーション」と称して注目されるようになってきています。 消費者(顧客)にいかに新しい消費経験の価値を与えるかは今やサービス重視の戦略の柱だからです。

その新しい経験価値としての「ゲーミフィケーション」は、次の2つのタイプに分類しておくことが重要だと私は考えています。

1)一般的な消費者の行動や購買ルールについて、ゲームを用いて「ゲーム外化」するもの
2)ゲーム行動の領域の中に消費者の行動を取り込んで「ゲーム内化」するもの

この2つは結果が同じようなゲーム的要素を持つとしても、その発生の仕方が逆方向であるものです。 以下にこの2つの仮説モデルを使って事例分析をしてみましょう。

「ゲーム外化」という場合の“外化”という意味は、最初に「ゲーム在りき」ではなくて、サービスや商品を売る仕組みがあって、それを軸にしながら「ゲーム的経験」を創っていくものです。
これが一般的な「ゲーミフィケーション」であり、いかにして通常の購買や消費サービスの中にゲーム機能を取り入れた経験を創るのか、ということが課題となります。ランク付けやポイント制などのゲーム機能を通常の消費行動に追加していくイメージです。

たとえば、「フォースクエア」と呼ばれる観光地でのGPS情報を利用した宝探しゲームがあります。商店街などで単に個別のブランドをアピールしても 買う動機にはつながりません。そこで、「宝探し」というゲームとして各商店の商品をモバイルで探し出し、競わせることで新たな発見や競争の楽しみを与える ことができるのです。

ゲーム自体は既存の宝探しというルールに沿うものですが、その場所が観光地であり、モノが商店街の商品となるならビジネス価値が発生するわけです。ただし、ここで何が顧客にとっての価値となるか、マーケティングとして仮説検証する必要があります。

同じような商品であっても、ゲームの場でより活きるような商品もあれば、無意味なものもあります。その比較や前提の検証といったことがマーケティングとして行われなければ、せっかくのフォースクエア利用もただの遊びと化してしまうのです。

フォースクエアには、ネットとリアルの場との連携が不可欠になる要素が豊富にあり、その意味では時間と空間(地理)の情報を紐付けしたビジネスモデルの宝庫ともなるものです。

認知科学による動画マーケティング(2)

▼経験デザインを演劇型マーケティングでどう活かすか
 ここでの「演劇型マーケティング」は、観客は受け身の視聴者だけではなく、その劇の中でアクターの役割も担う点に特徴があり「観客参加型演劇」といえるものです。
 先の4つの軸は、次のように演劇的なコトバと関連させることができます。
 時間軸⇒タイムライン
 空間軸⇒舞台設定
 媒体軸⇒舞台道具
 関係軸⇒キャスティング
 目的軸⇒劇のねらいとするもの
また、演劇では次のような用語が関係してきます。
 裏方・表方=舞台進行の裏で働く者が裏方であり、舞台の役者を中心として観客の前で演じるものが表方。
 裏方と表方のコミュニケーションが重要です。相互の連携が取れてこそ、観客へのパフォーマンスを最良のものにできるからです。これは企業であれば、営業と技術部門の連携のような問題に関係するものです。
 WEB上を舞台とみなせば、WEBマスターは裏方であり、表方はメッセージを直接記入する広報部の担当者といったことになります。ただし、その担当が個人名ではなく、ローソンの「あきこちゃん」のようにキャラクターを利用して顔を見せたとすれば、どうでしょうか。キャラクターは企業ブランドを代表するわけではなく、そのWEB上の舞台でのアクターであり、観客(視聴者)とのコミュニケーションを容易にして親しみあるものにする“仮面”のようなものだといえます。
 舞台ではどんな仮面でも付けることはできますが、そのブランドイメージやその舞台でのふさわしい役割に合わせた仮面を付ける必要があります。キャラクターとはそのような役割設定のための道具であり、コミュニケーションを方向づけ制約するものなのです。
 企業サイト上の各ページは、それぞれのテーマを持つ演劇の舞台とみなすことができます。演劇型マーケティングでは、それらのWEB上のページ内でふさわしいアクターがどう振る舞うか、その観客(視聴者)がどうそれを感じ鑑賞するかが問われるわけです。
 そして、そして幕引きや時間変化の中でのシーン転換があり、その各シーンの中でアクターがどう振る舞い、変化するのかが観客側の関心となります。あるシーンの場面によっては、自らその劇中に参加し、アクターとして演じることもあるようにするわけですが、以下、具体的に検討してみましょう。

認知科学による動画マーケティング(1)

▼経験デザインの分類がなぜ必要か
 顧客がどういった消費行動をその場でしているかは、従来は「消費行動理論」という学問の中で分析されてきました。それは心理的なプロセスをAIDMAやAISASで分けるなど、さまざまな分析モデルを設定して分析するといった方法でした。
 しかし、そうした方法の問題は典型的な消費行動のタイプ分けにはわかりやすくとも、実際の経験デザインがどう変化したかなどを理解するものではありません。
AISAS等の分析法では、その場で体験される感情的な要素や知識の役割などほとんど除外されていたからです。
 人が何かを消費するということは、ただモノとしての商品の機能を消費(利用)するのではありません。これは当然のことのようですが、それほど簡単なことではなく、マーケティングの中で「経験デザイン」の内容をもっと掘り下げる必要があることを意味しています。
 ネットマーケティング論は、ネット上での消費行動を分析することはもちろんですが、むしろ、それ以上にリアルでの行動との“関係性”を捉えることが重要なのです。これはオンラインtoオフラインという「O2O」のコトバで説明できるようなことではなく、経験デザインの内容を具体的なネットとリアルの関係で分析することを要求するものです。

▼経験デザインの分類内容
 経験デザインは次の5つの軸から分類をすることができます。
1:時間軸=時間の流れとともに経験される内容
2:空間軸=空間の移動(場所変化)とともに経験される内容
3:媒体軸=媒体となる道具(メディア)の違いによって経験される内容
4:関係軸=他者や集団との関係性による経験される内容
5:目的軸=ねらいであり最終的な成果のあり方を示すもの
これらの分類は、人が経験する認知的な働き、つまり、記憶や思考・感情の変化を考慮したものです。自分が経験している内容によって、その商品をどう感じるかは変化します。山にハイキングで来たときに食べるハンバーグと、普段の家庭で食べるハンバーグでは物理的に同じものでも記憶や感情に及ぼす内容には大きな違いがあるからです。
 「時間軸」は過去から現在、未来への時間順の経験ストーリが基本パターンとなります。「エピソード記憶」として記憶される点に特徴があり、その時間の中では自分が語る体験を意味づけ、未来の行動へと活かしていく特徴があります。物語的な経験の意味づけをすることで、自分らしさや思い出としてのブランドイメージなどを作るのです。たとえば、クリスマスでプレゼントされた商品が忘れられない記憶となり、その後の消費行動にも影響を与えるのは時間軸での経験デザインとして説明できるのです。
 「空間軸」は場所がキーとなる経験といえます。フォースクエアでのネットと連携した地域ブランドの宝探し的なゲームは、その場所と不可分なエピソード記憶として記憶されることになります。その地域の持つイメージは、そこの人との関わりやユニークな物産など思い出を豊かにする要因となります。
「媒体軸」はメディアという面、それと道具という人の行動を媒介する物理的なモノがそこに在るものを仮定しているものです。たとえば、フォースクエアのゲーム的な経験はネットがそれを支援する形ですが、空間軸と媒体軸が重なる形のものと理解できます。媒体を狭く“メディア”と考えるよりも、より広義な意味での“道具”とみなすほうが経験を捉えるのに役にたつでしょう。
「関係軸」は人との関係性(Relationship)のことです。家族や友人と一緒にショッピングしているのと、一人だけでそれをしているのでは消費行動の仕方や経験の中身が変わってくると考えるものです。
2000年代前半ごろにCRM(顧客関係管理)が注目されましたが、これは顧客との関係をITを軸にしながら経営戦略として活かしていくものでした。現在は「ソーシャルCRM」というようにSNSやフェイスブック活用を軸にしたCRMが重視されてきているといえます。
「目的軸」
このような5つの軸以外にも、消費行動を制約し方向づける要因は考えることができます。ただし、これらの軸が、どのように行動や経験を変化させるかを考えるときに、左記の4つの軸はどんな場合でも影響するという点で重要だということです。

ストーリー心理を動画に活用する方法(9)

■LPOの3つの最適レベル

LPO(ランディングページオプティマイゼーション)はオウンドメディアの自社サイトを有効なものにするうえで自宅の門として、その改善の優先性を常に保つようにすべきものです。ソーシャルメディアとの連携を考えるうえでは、とくに他のメディア媒体ごとの投資効果(ROI)を知るのに有効です。

LPOを実践する場合、ページを観る側のユーザがどんな期待を持ってアクセスしてくるかを理解しておくことが重要です。仮に商品ブランドを決めて買うようなケースなら、そこに当の商品が写真と解説つきであることが求められます。

そうではなく、その商品はすでに購入済みで今後新たなサービスなど計画があるかを知りたいとするなら、どうでしょうか。ロイヤル顧客であるわけですが、企業の新しい事業への方向性など語るようなページを創っておくことが求められることになります。

こうしたことからすると、LPOはページ選択のマッチングをさせるテクニックでは不十分であることがわかります。その基底にあるものは、「顧客の期待最適化」(LCO)だということでしょう。期待最適化が何かを理解していてこそ、ネット上のコンテンツをどうするかを含めたページの最適化を考えることができるからです。

では、顧客の期待最適化がわかればLPOは問題ないでしょうか。少し考えればわかるように、ネット上の最適性は今やネット上では全てを意味しないものであり、クロスメディアの中の一部になってきています。すまり、どのようなメディアを選択するかという「メディア最適化」が必要だということです。

たとえば、いくつかのメディア選択の主なパターンだけ分類すると次のようになります。
1)        ネット→スマホ→雑誌・本→ショップ
2)        スマホ→ネット→雑誌・本→ショップ
3)        スマホ→雑誌・本→ネット→→ショップ
4)        雑誌・本→スマホ→ネット→ショップ

このようなことから、3つのレベルでのLPの構成を考えることが必要であることがわかります。底から順に次のようになるわけです。
「顧客の最適化」(LCO))→「メディアの最適化」(LMO)→「ネットページの最適化」(LPO)

■「ロングテールの法則」は正しいか?

2006年頃から注目された「ロングテールの法則」とは、ヒット商品以外の商品が、全体では半分以上となるような現象をいいます。The Long Tailと表記されるもので、これは優良な顧客(商品)の2割が全体の8割の利益を生むという「パレートの法則」が一方であり、それと対比されている点が特徴的です。
次の図の左側が販売額が多い商品であり、購買額が高い商品群を表しています。
※参照図⇒http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%AB

一方、図の右に行くほど販売額が少ない商品群となりますが、ちょうど恐竜の尾のようにそれが見えるため命名されたものです。「パレートの法則」を知らないと、実のところロングテールを強調する意味もわからないのです。

パレートは社会学者であり、さまざまな社会現象が平均的なモノの見方では説明できず、重みづけのある少数が多数を支配することを証明しました。たとえば、アリは社会性昆虫といわれ、全員が同じようにいつも働いているかのように思われていますが、実際に違うといわれます。全体2割だけが一所懸命に働き、巣全体の8割の生産をあげているといったことです。

2000年前後のCRMが話題になり始めたころ、マーケティング戦略として優良顧客をどうセグメントするかが問われていました。このころはまだリアル側のビジネスが対象でしたので、優良顧客2割をどうセグメントしてそれをターゲティングしていくことが最大効果をあげるCRM戦略だとされ、このパレートが使われたのです。

こうしたことからすると、ネット上だからパレートは誤りといったことではありません。ネットでもやはり、優良客の効果は全体に占める割合として高いことに変わりがないからです。

ところが、「ロングテールの法則」こそ、ネット上のビジネスに当てはまる法則だとした固定的な考え方が一部で広まりました。そのような誤解は、アマゾンがネット販売で収益を上げている多くがベストセラーではなく、店頭にも並ばない本が多くあったことから拡大したと考えられます。

その“法則”を根拠づけたものとして、ネット側のコスト面と情報提供の自動化がありました。リアルのビジネスではとてもアマゾンのように多くの本を在庫に持つことはできません。しかも、情報が限定されていた時代では見込み客に告知する機会もなかったわけです。その壁を越えるビジネス環境があってこそ成り立つのがロングテールであったのです。

ところが、アマゾンの成功モデルが強烈であったため、あたかもネットビジネスで普遍的なもののように受け止められました。後にアマゾン自身も誇張し過ぎた点を報告しており、“法則”というほどに強調するものとはなりませんでした。

そのため、現在ではこのキーワードもほとんど死語になってきていますが、問題の本質はロングテールが成立する技術環境の変化を知ることにあったことです。とくに一般的な優良性を過大評価する見方を否定し、潜在的な需要を発見することができる視点を与えたことでした。

こうしたことから、ロングテールはネット上の“法則”というよりも、次の3点を同時に満たすビジネス条件で有効な顧客戦略だと考えるべきでしょう。

1)顧客のニーズが多様であること
2)商品アイテムが多いこと
3)在庫コスト、流通コスト、販売コストが低いこと

ストーリー心理を動画に活用する方法(8)

■「コミュニケーション・デザイン」 の視点

2005年ごろから「コミュニケーション・デザイン」ということがマーケターの間の問われるようになってきます。これはブランディングや販促のような広告コミュニケーションは当然ながら、サービス企画や商品開発のプロセスまで関与する課題をコミュニケーションによって解決していくものでした。

ネット上でのブログやツイッターの役割が大きくなるにしたがって、消費者(ユーザ)とのコミュニケーションはビジネス業務のあらゆる場(空間)と機会(時間)に入り込んできます。それはソーシャルメディアの勃興期でもあり、ネットがSNSやメールという「情報の交換」の領域から「人の交流」の領域へと進化してきたといえます。

人の交流の新しい形態がビジネス全体に大きな影響を与えることになるのです。だからこそ、ネット上の重点は“情報デザイン”ではなく、「人の交流」をデザインするコミュニケーションデザインということになるわけです。

電通においてコミュニケーションデザイナーの役職を持つ岸勇希氏は、広告マーケティングを恋人へラブレターを贈る“比喩(メタファー)”として次のように説明しています。
(※以下の斜め型文章は引用)

『この比喩にはいろいろなことが内包されていますが、今の生活者について例えると、どんなに気持ちを込めたラブレターを送っても、日ごろあまりにたくさんのラブレターをもらっている彼らは、我々が思うほど、それを読んでくれないというわけです。

「それではまずいので、もっと優れた、きちんと読んでもらえるラブレターをつくろう!」と、こう考えがちなわけですが、少し冷静に考えてみると、実は最高のラブレターを書くことがゴールではないという当たり前のことに気が付くわけです。

そう、目的は射止めたい相手を魅了するということなんです。この当たり前のことに気が付くと、アプローチの方法はいっきに広がります。

別にラブレターだけが気持ちを伝える手段ではなく、歌をうたうもよし、プレゼントを贈るのもよいかもしれません。時には直接メッセージを送るのではなく、相手の友人をご飯に誘って事前に味方にしておくことが重要かもしれません。

コミュニケーション・デザインでは、メディアやメッセージといった通常の広告アプローチだけでなく、広告が効きやすくなる環境のデザインや、そもそもの課題の意義から発想をしていきます。その結果、あらゆるコミュニケーションチャンスをデザインすべき対象として考えていくわけです。』

以上のように、広告的なコンテンツやメッセージだけでなく、あらゆるプロセスで回りの環境や仕組み、人の役割なども構成し直していくわけです。ただ、これは実際にはデザイナーというよりもプロデューサに近いかもしれません。

■「キュレーション」の視点

さらに“構成し直す”というコトバは、「キュレーション」として2010年ごろからネット戦略として使われ始めました。これは博物館のような知的・文化環境の場で、その専門家が独自の視点で展示物などを構成し直す活動を意味しているものだといいます。

つまり、専門的な視点が重視され、それを一般の人達がよりわかりやすく理解し、満足を得られるようなサポート的役割を持つ内容です。

左記の考えを活かせば、ネットマーケターはどういう活動をする専門家といえるでしょうか。

それはネットマーケティングの専門家として、ユーザへオリジナルな視点からコンテンツや仕組みを最適な形に組み合わせてサービスを提供する専門家ということになります。

ネット上にあるコンテンツやリアルの世界にある多様な情報・コンテンツを特定の視点から組み替えていくということ。 そこに1+1=2ではなく、10になるような新たな創造的価値を作り出していくような専門家だというわけです。

 

ストーリー心理を動画に活用する方法(7)

■「ゲーミフィケーション(Gamification)」を再考する

もう一度、ここでゲーミフィケーションの考え方を振り返ってみましょう。
2011年1月に米国で「Gamification Summit」が開催され、わずか1年ほどで世界中がそのコンセプトの影響を受けることになるほど注目されるようになりました。その可能性とはどういったことでしょうか。

注意すべきことはゲーム化することを自己目的にしたものではないことです。そこにあるのは、現実の制約やコストといったことを越えて、人がエンジョイし幸せ感を得ることのできる仕組みが何かを理解することです。

とくにマーケティング分野での応用を考えるとき、「仮説検証」の視点は不可欠なものです。楽しい仕掛けを作ればよいと漠然と思いこんでしまうようなら、ゲーミフィケーションはただのゲームでしかありません。

人と人を結びつけたり感動をシェアする発想が欠くお宅世界を構築するだけになりかねないからです。ゲーミフィケーションの効果を整理すると以下に要約できます。

①仮説現実化:マーケティング的な仮説検証を前提として、ゲームを応用した「仮想の場」でのビジネス実践を試行することです。

②ネット・リアル連携化:ネットワークの価値を最大化するゲーム性を追求しながらも、一方では現実の場との連携と交流を重視していくことです。

③感性化:ゲームの持つプラス感情(ワクワク感、スリル感、熱中感)を現実のビジネスの現場やプロセスに応用して、商品の価値にプラスした感動の経験を構築することです。

仮説現実化では、試行錯誤の実践をしながらも仮説を持って何を効果検証するかを明確にしておくことが重要です。このときには、比較対象を考え、何もしないケース(通常の業務形態)と新たに試みたケース(変化した業務形態)を比べられる形にすることです。

たとえば、キャンペーンでSNSと連携させたとすれば、それをしないケースも他方で設定し、その実践の結果を比較するわけです。

また、キャンペーン前とその後での効果の比較をするには、どれだけ効果が維持されたか(効果持続性)も理解しておくことも必要です。どの時点までを対象とするかは商品・サービスの内容や顧客特性によって変わってくるからです。